屋久島 2004.7.31〜8.6 :8回目の訪問

●3日目です。(コースタイムはレポート4/4)

【8/2晴のち曇時々雨:永田岳日帰りピストン】
4:20起床。相変わらず誰も居ない。
外は、月と星が眩しい。5時の出発を目標に、手っ取り早くパンで朝飯を済まし、寝床の片付けをするが、なぜか時間がどんどん過ぎていく。そのうち、他の登山者の車もどんどん乗り込んで来て、
5:45ようやく淀川登山口を出発。600m進んだところの道標に『携帯電話通話可能』の札が下がっている。GWに来た時は、こんなの無かったなぁ。
6:20淀川小屋到着。暫し淀川の撮影を楽しみ、日焼け止めクリームを塗って臨戦態勢に。
体調はそれほど良くないが、淀川登山口を先に登った人達をばしばし追い抜いて行く。しかし、追い抜いた人のうち、単独登山のオヤジが今にも距離を詰めては休み、距離を詰めては休みを繰り返し、じわじわと追ってくる(ような気になった)。
7:29高盤岳展望所に逃げるように駆け込む。さっきのデッドヒートオヤジは展望台に目をくれず、とっとと先に行ってしまった。ほっ。辺りも静まったところで、小花之江河へ
7:49小花之江河。夏の装いで、緑の苔が眩しい。足元の水辺を見ると、1cm位のオタマジャクシがちらほらいる。最近変態を遂げたような黒くて小さなカエルが、一生懸命前に進もうとしているが、同じ所で漂っているだけで、微笑ましい。
8:00花之江河。小腹も空いてきたので、ちょっと進んだところにある小さな空き地でブドウパンを頬張る。
8:26黒味岳分岐。ここにも携帯電話使用可能の札が。山の中で携帯電話が使用可能なのは、集落が見渡せる場所というのが相場なのだが、そんな感じがしない。どこか高いところにアンテナを立てたのか?
8:47投石湿原。鹿児島県は最近日照り気味だそうで、ここにもその影響が。いつもこんこんと湧いていた水場が、じわじわとしか流れていなく、底には赤茶けた枯れ藻のようなものがびっしり積もっている。ああ、下の小川で汲んどきゃ良かったな、と思いながら、携帯濾過器で水を補給する。
9:03投石平。ここら辺りから森林限界が始まり、夏場は日差しが辛くなるが、幸か不幸か高曇りである。毎回夏の登山では、ここ辺りで熱射病にかかってしまうが、今回はまだ大丈夫だ。投石岩屋を過ぎた頃、振り返ると投石平を従えた黒味岳が迫力で目前に迫っている。投石岳の中腹に登りつめると、辺りは低いヤクザサで覆われた緩やかな道となり、三岳をちらほら見ながら心地よい歩きとなる。
9:48翁岳の「最後の水場」。水筒と濾過器を満タンにする。今回の登山では100円ショップで買ってきた緑茶粉末を混ぜている。時々粉っぽいけど、ただの水と違ってぬるくなっても旨いし、無糖なので後で喉が渇いたりしない。これは正解だった。ゲンコツ岩辺りに来ると、ちらほら霧が出始めてきた。
10:22栗生岳。パラパラ雨が降り始めてきた。思い出したように降っては止み、降っては止みの繰り返しで、むしろ火照った体にはちょうど良い。でも、宮之浦岳山頂に差し掛かると、本降りとまでは行かないが、ザーっという感じで休みなく降るようになった。
10:40宮之浦岳山頂。頂上には、二十歳台位の若者が2人、傘に隠れながらコンビニ弁当食べている。「俺、中身の具よりも、いつもカロリーが一番高いやつを選んでいるんだ」と登山弁当論で盛り上がっている。今夜は新高塚小屋前でテント泊するだそうだ。通り雨では済みそうも無いので、ワシもザックカバーをかけ、ブドウパンを3つ食べて10分程して宮之浦山頂を後にする。雨は中振り位だが、辺りはかなり薄暗く、ただっ広いヤクザサの草原をテラテラ光る洗濯板のような木道が縫って何やら幻想的だ。
11:13焼野三叉路。雨は小ぶりだが、ガスも薄くなり永田岳がよく見える。
永田岳まであと0.5kmの標識に差し掛かる頃、急に雨脚が強くなり、ラッキョ雨まではいかないまでも、小豆雨くらいになり、辺り一面はみるみる川や滝が出現し、遠くでは雷も鳴り出した。うげぇ。靴の防水効果も役に立たず、歩くたびにじょぼじょぼ音を立てる。とりあえず風は大して吹いていないので、帽子の鍔で眼鏡が濡れないのが幸いだ。じゅくじゅくの靴にしかめ面しながら歩いているうちに、永田岳の取り付きに着いた。ひとまず休憩。ブドウパンを1個ほおばり、邪魔な荷物を置いてあちこち崩壊した道を登る。頂上近くの大岩に差し掛かった頃、急に雨が上がってガスが晴れ出した。おお、ラッキー。向かいの宮之浦岳も、裾が隠れているものの良く見えるようになった。
12:00永田岳山頂。すかさず悲願の『神様のクボ』へ。断崖絶壁の付近だけあって高度感が強く、恐る恐るへっぴり腰で除きこむ。Vの字に切れ込んだ絶壁を通して永田集落がうっすらと見える。V字の鞍部まで降りれそうだが、傾斜が急でロープが無いと無理そう。お助けグッズとしてDIY用品店で買ってきた10mロープがあったのを思い出してセッティングしてみたが、固定できるところが遠くて全然足りなかった。色々打診して、現在立っている大岩を回り込んで行く小道を発見。試しに歩いてみたら獣道で、ササで隠れた落とし穴や地雷(鹿の落し物)が仕組んであり、もうどうでも良くなって元の大岩の上へ戻る。V字谷の向こうは段々晴れ上がり、永田浜の様子も良く見える。さっきまでの大雨&ガスが嘘のようだ。多分、ワシの情熱を感じ取った神様が「アンタも好きネ。ちょっとだけヨ。」と見せてくれたに違いない。付近のガスはすっかり消えたが、宮之浦岳側の標高1000m辺りは濃い雲に覆われ、宮之浦岳を回りこむように、小高塚山から黒味岳の方へ雷が移動していった。『神様のクボ』を楽しんだ後は、山頂標へ。『永田岳』と書かれた山頂標は、薪割りをしたように根元まで縦に割れていて過去に落雷に遭ったようだ。あな恐ろしや。無事神様のクボが見れた事に感動して、山頂岩屋の一品宝珠大権現の祠にお礼を述べ、山頂を後にする。焼野三叉路への道は、さっきまでの大雨が嘘のように、すっかり水が引いている。ヤクザサの間を通っている道には、洗われて真っ白になった正長石の結晶でびっしり埋められて、まるで庭園の小路のようになっていた。
13:31焼野三叉路。ホームページのの表紙写真候補を撮影。GWに来たときに撮った写真がいまいち気に入らなかったので、再度の取り直しだが、如何せん辺りはガスっていて出来は全然ダメ。暫く待っても晴れる気配が無いので、諦めて宮之浦岳へ取り付く。それにしても、下るときはあっという間だった道も、登りでは頂上に着きそうでなかなか着かない。不思議なものだ。
14:03宮之浦岳山頂。山頂には初老の男女4人が居て、ガスの間からちらほら見える眺めに話弾んでいた。流れでワシも話に加わると『食べる酸素(顆粒)』と分けてくれた。以前、登山用品店で数千円するのを見て「高ッ!」と眺めていたヤツだ。(でも、興味はあったので、500円位のタブレット詰め合わせを買ってみた。)申し訳が立たないので、こちらもおやつにもって来たチーズタラをおすそ分けしたが、今度はバナナ味の携帯食を分けてくれた。ご馳走様です。やがてガスも晴れてきた。そのうち、また一人になり、山頂を後にする。雨はすっかり上がったが、行きは干上がっていた登山道が濡れて生き生きしている。屋久島の登山道はこうでなくっちゃ。安房岳近くでは、大岩の上でうろうろする鹿もいた。何をやっていたのだろう。そうしている間に投石平に達する。向かいの黒味岳山頂には2つの人影が動いている。動くミニチュアみたいで何だか面白い。しまりなく垂れ下がったザックカバーを畳んで、ふと顔を上げると、人影はいなくなっていた。
16:34花之江河。うっすらとガスがかかった花之江河には、4人組の初老のパーティが居て何やら登山道の話題で盛り上がっている。ちょっとうざったいので、4年前にモウセンゴケが生えていたのを思い出して、写真を撮りに石塚小屋への分岐に行ってみる。しかし、乾燥して枯れたのか、生存競争に負けたようで、以前にあったところはミズゴケに占領されていた。再び花之江河に戻るとさっきのパーティは居なくなっており、難易度が高い栗生歩道に向かっていったようだ。大丈夫かな。
16:46小花之江河。夏なのに辺りは暗くなってきた。雨はまだ降らないようだが、雲が重い。
小花之江河から高盤岳展望所へ向かう途中、気になる脇道があったので寄ってみると、そこは小さな広場になっていて、なにやら犬小屋のようなベニヤ板を立てただけの小屋らしきものがあった。「もしかして、本州で問題になっている山屋タイプ浮浪者の住家?」と一瞬緊張が走った。でも、良く考えてみると、木道の材料を置いていた名残かもしれない。
以前日帰りピストンしたとき、この辺りから淀川小屋までの帰路が非常に長く感じたのを思い出し、沢の音を聞いても「まだ淀川じゃないぞ。騙されるなよ、ワシ。」と自分に言い聞かせながら黙々と樹林を下る。そんな調子で歩いていると何やら、緑の人工物のようなものが木々の間から小さく見える。半信半疑だったが、やっぱり淀川橋だ。
17:50淀川小屋。行掛け、トイレ脇の小道を通って対岸に渡っていた人が居たのを思い出し、ワシも行ってみる。こちらの方が川が広い視点で眺める事が出来てなかなかいい感じだ。5分間まったり。あとは登山口へ向かうのみだ。体力的にはまだ余裕があったが、10時間以上も歩き続けるとそろそろ精神的に疲れてきた。登山口から淀川小屋までは35分程だったが、往路あっという間でも、帰路は倍以上に感じる。辺りはどんどん暗くなり、とうとう雨が降ってきた。そのうち、スーパーの袋だけを持った二十歳前後位の女性が向こうからやって来て、「白谷小屋までどれくらいでしょうか」と聞いて来た。白谷小屋といえばここからだと宮之浦岳を越えて、縄文杉を拝んで、辻峠を越えて、初心者だと15時間はかかるぞぅ。驚いて聞きなおすとやっぱり淀川小屋の間違いだった。それにしても、海辺のキャンプファイヤーでビールの買出しから戻ってきたようなあの軽装、一体何を考えてるのやら・・・。
18:35淀川登山口。結局12時間半か、いやー長かった。ちょうど雨も上がり、車に用意してあった下山時用の服に着替えて、100円ショップのドリンク剤を1本。いいねぇ、この瞬間。
トイレ前に止まったワゴンの横では、何やらコンロで夕飯の準備をしている人がいる。今晩も淀川登山口宿泊者は1名だけのようだ。
まずは、一風呂浴びたいので、そそくさと車を進める。集落が見え始める辺りで再び土砂降りになった。もう車中泊はしたくない気分だったので、静かな原集落の宿を素泊まりで予約する。宿に着いた時は雨もすっかり上がっていた、今回の旅もツついている。宿はワシ一人だけで、調理場所が無かったのでレトルトおかゆをそのまま平らげ、後は爆睡モードへ。


まだつづく