屋久島 2004.7.31〜8.6 :8回目の訪問

●6日目〜7日目です。



【8/5晴:休息日(安房川リバーカヤック)】
永田の宿で朝食を早く済ませ、永田岳に見惚れながら一目安房へGO!
安房に着いたら、今晩の宿の駐車場に愛車を停めて、熊本土産の巾着袋に必要最低限の荷物をまとめて安房川へ。
以前に安房の宿から眺めて、カヤック乗りが集まっていた橋の向こうの船着場を知っていたので、早速向かうと、皆いるいる。20人ほど集まって準備をしている。で、受付係に自己紹介をしてみたが、話がかみ合わない。○然島とか全然違う団体の集合場所だった、ガビーン。ワシが予約した○NACはどこじゃーい。約束の時間になったのに他の団体は見当たらない。携帯電話の送信履歴を見ても、どれがどれだか分からないし、必要最低限の荷物で来たので、○NACの電話番号メモも無い。あせっている間に事もあろうか、巾着袋の縫い目がびりびり裂けだした。ワシ、ピーンチ!
とりあえず、104で電話番号を確認して掛けて見ようとしたところ、突然着信が。出てみると○NACの方が、ワシを探している。誘導にしたがって見てみると、橋の手前の船着場だった。こんなとこあったとは気付かんかった・・・お恥ずかしい。
そこで待っていたのは、昨年と今年の山と渓谷社の屋久島ガイド本で、アップで写っていたWさんではありませんか。本でお目にかかった方に直に遭えるとは、なんだか芸能人に遭ったみたいでいいですな。メンバーは講師Wさんと、北九州のMさん、関東のNさん、それにワシで全4名。屋久島の大御所○NACにしては拍子抜けだが、みんな若い女の子なので、我が人生でかなり高ポイントの地点に居たようだ(相手は逆か?)。 準備運動をこなしたら、各人にカヤックが一艇ずつ割り当てられた。カヤックにはそれぞれ女性の名前が付けられいたが、MさんNさんのは白い船は日本名(失念)で、ワシの青い船はメアリーだという。なんで、ワシのだけ英名と突っ込むと、MさんNさんのはXXXから(失念)、ワシのは『大草原の小さな家』の登場人物から取ったそうだ。いいセンスですな。他にもローラはともかくキャロラインも居るという。おっかさんの名前を持つ船ってどんな船なんだろう?装備の付け方や安定する船の乗り方を一通り教えてもらった後、いよいよ実践へ。思ったほか船は安定して操作が楽だが、なぜか右ばかり向いてしまう。橋の上からは、地元の子供が「こんにちはー」と手を振ってくる。いいねぇ、この純真さ。船着場の辺りで暫く練習し終わると、ちょっと離れた岩場へ進む。「水に手を入れてじっと下さい。エビが寄ってきますよ。」とWさん。岩を触るように水に手を漬けて十数秒、スジエビが2〜3匹手に留まって手垢をついばみだした。ちょっとこそばゆいが、ときどきチクチクして、Mさんが「あ痛ッ!」と叫んでいる。海の掃除屋として、魚の口を掃除する熱帯エビの話は図鑑で見かけるが、川にもそのルールが適用されているとは驚き。それにしてもこいつら度胸あるな、このまま口を開けて水に潜っていると、苦労せずにエビが食えるなぁ、と邪な事を考えてしまった。
暫く進むと、なぜか川に場違いな、『黒潮丸』と大それた名前の漁船が座礁している。持ち主不在で長いことこのままになっているそうだ。カーブに差し掛かった時、先頭を進むNさんが何やら騒いでいる。見れば、2mほど傍の岸に、白と黒の斑模様の体に赤い顔を持つ、まるでゴイシチャボがアヒルの体系になったような奇妙な鳥のつがいが居る。バリケンという戦時中のコメディアンのような名前のカモで、安房川には野良化した3羽が住み着いているそうだ。一漕ぎすれば上陸できる近さなのに、こちらを気にせずに何やら楽しそうに岸辺で遊んでいる。トサカが張り付いたような赤いイボイボ顔がちょっと気になるけど、お尻がアヒルそのものなのでカワイイ。池や田んぼなら魚を取れるかも知れないが、この体型は川魚を取るには厳しそうだ。何を食ってるのか気になっていたら、Wさん待っていたとばかり「日頃はこうして遊んでいるけど、お腹が空くと岸辺の穴を一つ一つ確認して、中に隠れている蟹を食べているんですよ」とコメント。蟹ばかりだと栄養のバランスが気になるけど、気ままで良いの〜。
先に進むと、なるほど木の根や岩の隙間は兎も角、岸辺の壁に蓮の実のように多数の蟹の巣が掘られている。でも丸見え、何やってんだか。バリケンが食事に困らない訳だ。
また暫く進み、ガジュマルの林が良いあんばいで木陰になっている砂浜で休憩、おやつとドリンクを頂く。ほっと一息つくと、「今から”沈”の練習をします」とWさん。ゲッ!準備運動の時に用語の説明を受けたけど、実際にやるのかい。眼鏡とTシャツを外し、ライフジェケットを直に纏って待機する。女性陣が終わるとワシの番。使用前・使用後の写真を撮ると言うので、とりあえず使用前を撮って、いよいよ転覆。ザブン。風景は一変して、天井が明るい水の中。鼻に水がちょっと入ってしまった。シンクロナイズドスイミングの鼻挟みが欲しい気分だ。水漏れ防止のスカートを急いで外して、逆さまのまま体を抜き出し、急いで水面へ。結構上流に居るようだが、まだ汽水域らしく水がしょっぱい。ライフジャケットで命の別状は無いが、スウェットスーツ生地で出来た足袋みたいな靴では、全然コントロールが効かない。「カヤックを元に戻して下さーい」とWさん。四苦八苦して転覆した船をやっと戻す。船に片手を乗せて岸に戻ろうとするが、同じところでバタバタするだけで、一向に前に進まない。うーん、逆さにした三角ポールの様なプロポーションの脚は水かきするのに非常に不利だ。とうとうWさんがロープを投げてきた。やっとこさロープをつかみ岸へ生還。お疲れ、ワシ。使用後どころか、使用中を大量にフォーカスされたつぼやんでした。
皆一息ついて、更に上流へ進む。高さ70mの松峯大橋が赤いアーチを作っている。これよこれ、安房川のシーカヤックに昔あこがれた理由。川岸からはこの素晴らしいアーチを眺められるポイントを見つける事が出来ず悔しい思いをしていたけど、念願かなったり。今度は荒川ダムの排水口近くの岩場に上陸。「お昼にするので、流木拾いを手伝ってください」とWさん。早速水辺に乾いた枝を拾いに行く。シーズン中は毎日のように拾っていると思うのだが、結構落ちている。皆が集めた焚き木に火を付け、用意していた鉄板を乗せてWさん調理開始。「ジャーン」まず取り出したのは、大きなサバ。おお、屋久島名物サバですか、と思っているうちに「パカッ」と言いながら2枚に開くWさん。切れ込みが初めから入れてあったのだが、ちょっと面食らう我々。「実は、これ外国産なんです。」なんじゃそれ。まぁ、何はともあれ、外で魚を焼いて食べるのもガキの時以来だし、脂が乗ってうまい。突然、皆の身の上話(自己紹介?)の時間が始まった。Mさんは看護師で、前の病院を辞めたばかりで、次に決まったの救急病院勤務までのオフを利用して屋久島に遊びに来たとの事。Nさんは、医者の父に反発して家を出てみたものの、自分のすべき事が見つからずに幾つかの職を変え、時にはワシントンにも住んでいたりも。父の死後に"自分がすべき事"を悟るが、それが医療である事に愕然としたそうだ。今は家継ぎも兼ねて医学生をしているとの事。スケールでけぇ。ガイドのWさんも、昔カナダに暫く住んでいたが、日本に戻ってきて親から"職か結婚"を迫られ、結局屋久島ガイドに落ち着いたそうだ。そんなこんなで、続けて焼きソバ調理に取り掛かりはじめたところ、Mさんが「カヤックに酔いました」とダウン。自分が運転する車で酔う人がいるけど、この娘もその性質かなぁ、大変だな。折角だからとMさんは少量は食べるようだが、唯一の男であるワシが責任持って残りを食い尽くす事になった。ちょっと苦しいけど、ごっつあんです。食事が終わると30分の昼寝タイムになった。先に寝たMさんを追うように木陰で横になるWさんとNさん。しかし、一度寝入ると数時間は起き上がる事が出来ないワシ。こんな大自然の中、なんだか時間も勿体無いし、後ろ髪引かれながらも、昨日の日焼け冷ましも兼ねて川とたわむれる。屋久島の川にしては、妙に濁ってるのがちょっと残念(後でWさんに確認してみると、上流で土砂崩れでもあったのだろうとの事)。日差しは強いが、水冷効果もあって涼しい。斜め向かいの荒川ダム排水施設を見ながら、上流にある有名じゃない方の千尋滝(中島権現滝)に想いを馳せたり、松峯大橋を眺めてボケーっと時を過ごす。そうしているうちに橋の上に、1台の大型バスがやってきて真中で止まった。大型バスなのだが、70m上にいると豆粒のようだ。観光客の視線を感じながらも、バスを乗せた橋を激写。橋の巨大さが良く分かる良い比較写真が撮れた。やがて皆の昼寝タイムも終わり、再び乗船。
暫く上流に向かうと、荒荒しい岩肌がむき出した絶壁に囲まれてきた。左側には、いつでも雫がしたっているところや、ちょっと窪んだところがある。窪んだところはエコーがかかる天然のコンサートホールだそうだ(実際にコンサートはしないけど)。「歌っても良いですよ」とWさん。ちょっと歌ってみたい気もしたが、カラオケに行くと「マイクから口を離せ。いや、いっそマイク使うな。」と言われた事があるほど喧しい歌い方をするワシ、この神聖な空間には合わないようだからやっぱり止めた。すぐ傍には、角張った岩がゴロゴロしているポイントがあり、2人の男が釣りをしていて、年配の方が「こないだ沢山のカニが卵を産んで凄かったよ」とかWさんと長話をしている。おや、ワシのHPの写真(屋久島コーナーの湯泊海岸温泉)で、一緒に写っていた伝説のカヤッカー○川さんではありませんか。さすがに屋久島内で有名なだけあって、ガイドのWさんとも仲が良いようだ。Wさん、ワシらをそっちのけで話に夢中になっている(笑)。
そうして進んでいるうちに、川は浅くなり、棚段になった行き止まりにたどり着いた。遡上中はほとんど他の人に会わなかったが、ここには20人ぐらい居て賑やかだ。おやつ休憩をしたあと、「今からシュノーケーリングをやります」とWさん。眼鏡を掛けたワシとMさんには、度付きのゴーグルを出してくれた。今まで海水浴といえばピンボケになるのが不満だったけど、そんな便利なアイテムもあったんだ。おお、感動。先述の通り、水が少々濁っているのが残念だけど、いるいる、10〜20cm位のハゼが。熱帯魚の水槽を見ると、いつも色とりどりの熱帯魚より、掃除用のハゼ風の魚ばかり見入ってしまうワシにはたまりましぇ〜ん(水槽の掃除役と言えば、スジエビも大好き)。
たっぷり水中観察を楽しんだ後は、再びカヤックに乗ってUターンコースへ。松峯大橋の下を再びくぐる。70m真下から眺めた橋もなかなかの迫力。向かいから別の団体がやって来た。川慣れしている一向のようで、カヤックの上にはスマートな犬が仁王立ちになっている(後で調べてみたら、どうやら救助犬だったようだ)。行きは真っ直ぐ進まなくて往生したけど、帰りは水の流れに逆らわない為か、舵取り(無いけど)が非常に楽だ。みんな緩やかな流れに乗って、思い出したように時々漕いでいる。さっきの
天然コンサートホールに差し掛かると、突然Nさんがシューベルトやプッチーニのオペラを歌い出した。昔、歌を習っていた事もあったそうで、歌詞は原語のままだ。谷間の静かな川に響くアカペラの生オペラ。何とも贅沢な時間。そうしている間に、あの伝説カヤッカーがゆっくり追越して行く。我々が乗っている艇の2倍以上の長さのカヤックを一人で操っている、すげえ。またWさんと暫くおしゃべりした後、岸に寄って行った。こんどは2艇に分かれた家族が向かいからやって来た。後ろのカヤックは奥さん一人だが、先を進むやや大きめのカヌーにはお父さんとその2人の子供が乗っていて、おだてるお父さんと愚痴を言いながらちょこまか漕ぐ子供の組み合わせが笑いを誘う。我々が黒潮丸を越えると、"沈"の練習をしたガジュマル林が見えた。引き潮の為、ネコの額のような砂浜が結構広くなっている。
やがて船着場も見えてきた。もっと漕いでいたい心残りもあるが、夕方に差し掛かり仕方がない。船着場の階段には、中学生位の近所の少年達が海パン一丁で寝そべっている。今時滅多にお目にかかれない田舎の光景だけど、ちょっと邪魔。どいてもらうついでに、Wさんは荷物を運ばせている、流石だ。後片付けも終わり、清算をすませる。そういえば、今回のツアーを紹介してくれたゆかさんが、よろしく言っといてと伝言してきてたな。で、Wさんに「何度かお世話になってると思いますが、来週から○○さん(ゆかさん本名)が来ますので、よろしくお願いしますと言ってました」と伝えると、Wさん「○○さぁん!?」と白目を向いて喜んでいる。ゆかさん、一体何をしでかしてたのだ?
まあ、そんなこんなで今日はお別れ。MさんNさんはちょっと遠い橋の上のお手洗いに行ってしまって、さよならを言えなかったのが心残りだが(電話番号も聞いときゃ良かったかな)、Wさんも「それでは、また」と言うのでその場を後にしてホテルへ向かう。
日焼け止めを塗ってたのに、更に焼けている。その晩の風呂も大変だったのは言うまでも無い。大風呂を前にして、シャワーで我慢するしか無かった(涙)。



【8/6晴のち雨:屋久島発、福岡へ】
そういえば、今回の紀行で、お約束の海中温泉に寄っていない。でも、朝食を取ったら、昨日の疲れだろうか、睡魔が襲ってきた。気が付くと、チェックアウト時間(10時)のお知らせ電話が鳴っている。ありゃりゃ、13:30の船に乗るには海中温泉の時間は無い。仕方がないので、チェックアウトすると、そのまま宮之浦へ向かい観光センターと港(帰り便チケット引き換え兼ね)で大量の土産物を購入。
ダッシュで屋久島ラーメンを食べに行き、ダッシュで文化村センターに映画『屋久島〜森と水のシンフォニー』を観に行く。ふう、ぎりぎりだったけど、何とか間に合った。相変わらず凄い映像だ。映画を観終わった後は、ロビーで屋久島関係の書籍を読み漁る。
港に戻ると、並んでいた車は積み終わっていて、ワシの愛車は入出庫口のすぐ内側横付けになった。往路といい、今回は面白い所に停めさせてくれる。また一等客室へ行き、横で野球盤をやる家族連れが喧しいが、のんびり読書をしながら鹿児島港へ向かう。
鹿児島から福岡まで高速道路を通っているとやがて雨が降り、人吉近くの難所カーブ場のところで渋滞しだした。のろのろ先に進むと、セリカが道路の左側を横切るよな体制で壁に追突している。無茶な追越しをやってスピンしたようだ。一人相撲で、ドライバーの生命も大丈夫なようだが、無謀運転は止めろよな。
カヤック実習だけは、水中撮影が出来る某"レンズ付きフィルム"を使用していたのだが、4年前の屋久島紀行でトローキの滝を撮ろうと思い立って買った代物。当時で保証期限ギリギリだったので、出来上がった写真をみると結構画素が飛んでいて、ほとんど青っぽいザラザラしたピンボケ写真になっていた。まあいいや、次回はちゃんとしたフイルムを使おう。



最後に、今回の屋久島紀行の反省。

【今回達成できた目標】
@神様のクボ拝観
A海水浴
Bカヤック体験
C原チャリで林道巡り

【今回達成できなかった目標】
@晴れたモッチョム岳からの眺め撮影。
A晴れた太忠岳からの眺め撮影。
Bトローキ滝(海に直接落ちている滝)を海面から激写。
C翁岳山頂直下までの登山
Dグラスボート乗船(笑)

と言う訳で、また行きます。


長文でしたが、以下コースタイムです。

●8月2日(永田岳日帰りピストン)
5:45淀川登山口→6:20淀川小屋(休憩15分)→7:29高盤岳展望所(休憩5分)
→7:49小花之江河(休憩3分)→8:00花之江河(食事休憩7分)
→8:26黒味岳分岐→8:47投石湿原(水補給10分)→9:03投石平
→9:48翁岳の「最後の水場」(水補給3分)→10:22栗生岳
→10:40宮之浦岳山頂(食事休憩15分)→11:13焼野三叉路
→12:00永田岳山頂(35分休憩)→13:31焼野三叉路(休憩7分)
→14:03宮之浦岳山頂(食事休憩20分)→14:47翁岳の「最後の水場」(水補給6分)
→15:44投石平(休憩7分)→15:54投石湿原(水補給8分)
→16:34花之江河→16:46小花之江河→17:50淀川小屋(休憩5分)
→18:33淀川登山口



(このレポートのうち8/2の登山レポートは、2004年10月4日にメーリングリスト「山ネット九州」に投稿しています。)