屋久島 2003.8.1〜8.9 :6回目の訪問

●3日目です。(コースタイムはレポート4/4)

【8/3晴:永田歩道】
午前4時すぎ、向かいのお二方は予告通りに起きてみるが、
「わー、まだ真っ暗」「星がスゲー」と言って、また寝床に入る。
二言目にワシも反応して、星空を撮影した跡、ワシも寝床に戻る(笑)。
結局、6時前に支度しながら、彼らを見送る。
これから永田岳に登るかどうか迷うが、以下の3つの理由で結局やめる。
 1.永田歩道は、7時間ひたすら濃い森の中を標高0mまで下るコースで、
   人通りが少なく遭難率も高い。特に登りは上級者向け。
 2.昨日の実績からすると、途中でバテる可能性大で、日没まで下山できないかも。
 3.七ツ渡から先は、水場が無さそうなので、行動食だけで凌ぐ必要がある可能性大。
   行動食の残りは、ブドウロールパン3つ、ゼリー食1つ、ビーフジャーキー1袋しかない。

朝食は七ツ渡で取ることにして、6:30小屋出発。
鹿之沢小屋からは四方に道が延びており、永田岳方向、花山歩道方向、トイレ方向が判っているので、
残りの小屋向かいの道かな、と思うがどうも違うくさい。
結局、歩いて3分かかるトイレは永田歩道の一部だったことが気付き大いに驚くが、小屋正面の道は何だったのだろう?
歩き始めて20分、急に開けた小さな谷間の右岸に出る。数メートル下には、小滝ありの大川の源流が流れ、実に爽快。
10分後、名高い七ツ渡(上流側)に出る。淀川源流をさらに緩やかにしたような川で、
一枚岩のような川底のわずかな窪みを、角砂糖のような小石が均している。暫く見惚れる。
更に歩みを進めて10分後、七ツ渡(下流側)に出る。
今度は打って変わって、子供位の大きさの岩がゴロゴロしている暗くて狭い川で、流れがやや激しい。
今日のコースでは最後の水場かも、と思いながら、水筒に補充し、遅めの朝食を作り始める。
種類は違うが、またパスタ食。食後に飲んだカプチーノがまた、旨かった。
1時間程朝食休憩を楽しんで、出発。
目印のテープが探しにくくて、時々10秒ほど考え込む場面があるが、昨日の花山歩道と違って、
要所までの距離が載っている道標が点在しているのが有り難い。
途中、「あれが桃平か?」と思われる巨石が転がる小ピークを幾度も過ぎるが、どれが本当の桃平か判らず。
目の前をヘビが横切ってちょっとビビる。
9時半、突然目の前に、岩盤を斜めに立てかけたような、姥ヶ岩屋が現れる。
緊急時には5〜6名程泊まれるそうだが、思った以上に大きい。
中に入ると、隅にアリジゴクの巣らしきものがある。
アリジゴクの巣は、乾燥した砂地に作られるので、雨露凌ぎ度は万全なようだ。でも、水場が無いのが大きな欠点。
地図上では、姥ヶ岩屋から50分で竹ノ辻出るのだが、一向にそれらしき場所は無い。
10:04小さな川に出合う。小腹も空いたので、水筒に水を補充しながら、ビーフジャーキーを頬張る。
調理時間が惜しいので、次の食事に向けて、アルファ米を水に浸す。
更に10分ばかり進むと、『竹の辻入口』と書かれた道標がある。「うげぇ、まだだったのかよ。」
竹ノ辻を越えると延々4時間強の急な下りが始まる
・・・筈だが、それらしき場所は無い。
更に30分程進むと、目の前に邪魔っけな倒木が現れたので、やっとこさ乗り越える
と、何やら文字が書いた棒が3本立ててある小さな広場に出る。
「何なに・・・嶽ノ辻?」
ガビョーン!近くにはしっかり『ここは 竹の辻』と書かれた標識を転がっている。
「うげぇ、まだだったのかよ。」
それにしても、『嶽ノ辻』の当て字は、言えて妙だ。
傾斜もやや急になり、1時間程下ったところ、突然、1m先の落ち葉の中から
「シャーッ」という奇声とともに、トグロを巻いたヘビが現れた。
立てた尻尾をガラガラ言わせている。どうやらマムシのようだ。
(尻尾をガラガラ言わせるのは、ガラガラヘビだけかと思ってたら、間違いだったんですね。)
いきなり襲われなくて良かったと思うが、行く先からケンカを売ってきている。
道幅1m強しかないので避けて通る事は出来ない。ピーンチ!
とりあえず、目を逸らさないように10歩程後退して30秒ほど待ってみるが、全く動かずこっちを凝視している。
注意を逸らそうと20cm程の木片を投げてみるが、ピクリとも動かず。
次は同じ程の木片をすぐ傍へ投げてみるが、ピクリとも動かず。
更に鹿の角のような枝をヘビに被さるように投げてみるが、ピクリとも動かず。
完全にワシにロックオンしているようだ。
こんなところで時間をとられると、日が暮れるまでに下山出来ない。
まして噛まれた時は、携帯通じないし、数日経たないと誰も通りそうも無いので野垂れ死にだ。
マムシは、2m程ジャンプ出来るそうだが、意を決して登山スティックを武器に戦う事にする。
「鹿や猪が襲ってきた時の武器にもなるよ」と冗談交じりで言ったことがあるが、
まさかその日が来るとは・・・
下段に構えた左手のスティックで相手の注意を逸らし、
中段に構えた右手のスティックを一気に振り下ろす。
結局ワシの目だけ見ていたマムシは、スティックの不意打ちを受けて、
スティックに攻撃目標を変えるが、すでに下半身は動かず。
3発も叩くと引っくり返って動かなくなった。
しばし呆然とするが、合掌「すまん」と謝り、足早に進む。
殺生をしたショックも覚めぬまま、20分も下ると急に木が倒れて出来た更地に出る。
腹は減ってきたので、先程のアルファ米にカレーを掛けて半分食う。
(やっぱりカレーは温めないと旨くないですね。油も分離してるし。)
10分も下ると、『ここは水鳥沢』と標識のある場所に出る。近くに水場があったよう
だが、ちょっと谷を下らなければならないようだ。
そろそろ足もふらついて来た。
更に1時間半も下ると、森は細い杉の林となった(人工林?)。
さらに20分程下ると、辺りはモワーっと暑くなり、突然ヘゴが出てきたかと思えば、
あれよあれよと言う間に永田歩道入口に出てしまった。
良く見ると、一昨日車で確認できた所の目と鼻の先である。
8時間半もうろついていたのに、結局、山行中は誰にも会わなかった。恐るべし永田歩道。
それにしても、恐れていたヒルは全く出なかったのは有り難かった。
登山道から出ると、そこは南国の林道。すごく暑い。
果樹園を抜ける時は、「ワシを狂い殺す気か?」という位、顔の周りを小さな虫が纏わりついて、またまたうざかった。
でも、集落に出る頃には、うるさかった虫も居なくなった。
30分後に永田橋に着く。地図上では1時間掛かる部分だ。下りと平道だけは強いなワシ。
バス停前に着くと自動販売機に向かい、登山中にずっと欲しかった冷たいドリンクを飲み干す。
一息ついた後は、今晩の宿へ歩む。
辺りは明るいけど、非常に静か。
道の脇に生活廃水と思われる小川が流れているのだが、
白い砂利の上を全く透明な水が流れて綺麗である。
ところどころ、小さな花も咲いていて、カニも居る。
流れにしばし見惚れていると、道をすれ違う小学生位の女の子が、見知らぬワシに挨拶してきた。
ええ所や、永田集落。


まだつづく