屋久島 2005.4.29〜5.6 :10回目の訪問

●4日目〜6日目です。


【5/2雨:休息日、白谷雲水峡】
そんなに疲れている自覚は無いが、身動きできない車中泊が続いてとどめは前日の大雨だったので、本日は体調確認を兼ねてのんびり過ごすことにする。前日の大雨で、町内には縄文杉コース(荒川口)のバス運休を予告が流れていたけど、どうなったのかな。遅い朝を迎えるとオーナーが轢きたてのコーヒーをご馳走してくれた。そうかと思うと掃除が済んだオーナーは自宅に戻られたようで、宿の中に一人取り残されてしまった。
ここは屋久島好きの作家Tがひいきにしている宿。時間もある事だし、宿帳13冊を読破する事にした。おお、作家Tの記載もあるある。記念激写激写。屋久島関係の本も多数置いてあるので、興味ある特集本も読破。
そんな事しているうち夕方に差し掛かってきたので、洗濯も兼ねてちょっくら外出する事にする。白谷雲水峡の一周コースから外れているため暫く会えなかった弥生杉が傷が気になっていたので、目的地はそこにする。
16:10白谷雲水峡駐車場。激しく雨が叩きつける。協力金を払い入場。入口から10分程度のような気がしていたが、今回は片手に傘を持っているだけあって、なかなかたどり着かない。16:30弥生杉へ到着。
この銘木は白谷雲水峡のシンボルだが、'00年に屋久杉材目当ての泥棒に幹をくりぬかれ、'03年にはくりぬかれた穴をふさいでいた詰め物がいたずらで持ち去られたという。問題の傷跡はうまく隠してあるが、傷を中心にタケノコのような形で広範囲に腐食が進んでいる。この杉はこの後も千年以上に渡って傷跡をさらす事になるだろうが、犯人達は現場に戻ることもなく、罪悪感もなくやった事すら忘れてしまっているかと思うと腹が立つ。
昨年の台風の影響で、弥生杉展望台の数m先の道は土石流で跡形もなく、赤土と巨大な一枚岩が大空の元にさらけ出されていて、暗い森のこちら側から眺めると奇妙な感じがした。土石流の規模がもっと大きかったら弥生杉も危なかっただろう。しかし天命だったら諦めが付くが、人為的だといたたまれない。弥生杉の周りを暫く回った後、先の道は消失しているので元の道を引き返す。白谷雲水峡を後にして、宮之浦のコインランドリーで洗濯しているとすっかり日が暮れてしまった。
宿に戻ると、昨晩に縄文杉行き運転手を探していた関西の女の子コンビが、明日のヤクスギランド行き運転手を探している。この女の子コンビ、登山や屋久島に関してかなりの初心者のようで、昨晩も予備知識無しで縄文杉コースを行くと言い出して周りをハラハラさせていた。一人旅に飽きてきた頃だし、ヤクスギランドも久々言ってみたいし、何よりも若い女の子のガイドも悪くは無い(笑)。で、明日7時(だったと思う)出発にてワシの愛車に乗せてあげる事にする。宿のダイニングキッチンでは、今晩もささやかな宴会が行われ、夜も更けて行く。例の女の子コンビはさっさと寝てしまったが、ワシは2時位まで付き合ってしまった。大丈夫か、ワシ?



【5/3曇後晴:ヤクスギランド、島半周】
お互いチェックアウトなので慌しく荷物を積み込んで、7時すぎに宮之浦の宿を後にする。
安房で飲み物を買い、8:30ヤクスギランド到着。
なんだかんだ準備をして8:44いよいよ入場。昨晩の雨で森がしっとり濡れていていい感じ。まずは、くぐり栂がお出迎え。とりあえず女の子コンビに、くぐり栂の根元になぜ大穴が出来たかを解説する。8:48最初の林泉橋がお出迎え。いつ見ても屋久島の水は綺麗だ。8:58千年杉。9:04苔生した岩を流れる小さな清水に出会う。9:07荒川橋。荒々しい彫刻のような川原がよい感じ。9:30安房歩道分岐。花之江河に続くまだ見ぬ道・・・思いを馳せながら安房歩道入口の階段を激写していたら女の子コンビに不思議な顔をされた。すぐそばに三根杉・母子杉・天柱杉と本格的な巨杉登場で彼女らも大喜び。蛇紋杉も見たがっていたが、帰りの船に間に合わないので断念させる。10:04沢津橋。うっすらと霧が出始めた。森の中を進むにつれ霧は濃くなり、なかなか屋久島っぽくて良い。10:23仏陀杉。本日の大トリ登場で彼女らもまたまた大喜びで、15分近く眺めていた。妖怪が出そうな霧深い森に響く関西弁。何だか凄い組み合わせだ。その後はくぐり杉・双子杉など眺めて退場。昨日は縄文杉を断念した彼女らのためにちょっと車で上ったところにある紀元杉で記念撮影。さすがに疲れ果てたようで帰り時には車の中で眠ってしまっていた。サプライズで松峰大橋に寄り70m下にある安房川を眺めさせ、ワシの好きなヴァンゲリスの人間賛歌マーチ「ヴォイシズ」を流しながら木立の道を下り、安房港の駐車場に止めたらうまい具合に曲も終わって彼女ら大喜び。別に狙った訳ではないけど、いい思い出作りのお手伝いが出来たようで何より。
彼女らと別れた後は、今回の旅行の目的の一つ、”海から眺めたトローキ滝撮影”に備えての下見だ。カヤックガイドのB○Kさんに教えて頂いた事には、原漁港出発が良いらしい。外周道路から海への道は網目のようになっているので心配だったけど、難なくたどり着いた。そこは高さ20mぐらいの防波堤に囲まれたやや小さな港だった。人影が無いのが以外だったが、とりあえずよそ者が駐車して邪魔になるような場所ではなくて一安心。トローキ滝方向は向かって左だが、防波堤の階段は右の方にしかなく、大きく回りこんで防波堤の端に立つ。結構風が強い。波立つ海を見ながら「あれが明日行く海路かー」と、一人盛り上がりながらもちょっと不安になる。とりあえず、海上のコースのイメージが固まったところで漁港を後にする。永田の宿に向かう途中に大川の滝に寄ると、昨日の大雨で見事な瀑布となっている。これ、これが見たったんやー!今まで見た大川の滝は、左半分しか流れていないときか、台風一過の冗談のような大洪水だけで、ガイド誌に載っているようなバランスの取れた姿が拝めるとは。寄ってみた甲斐があったもんです。ついでに大川の滝下流の砂浜も見に行った後、西部林道を通り本日の宿がある永田へ。安全チェックの為、部屋の中でカヤックを膨らませていると、手押しポンプが「キュ〜、キュ〜」と情けない音を立てるものだから、女将さんに「何やってるんです?」と聞かれてしまった。お騒がせしましてすみません。



【5/4晴:トローキ滝シーカヤック】
朝起きると外は気持ちいい程、晴れていた。否応無く気分は高まり、朝食を済ませるとそそくさと島を半周引き換えして昨日下見した原漁港へ 。
装備品を確認して、カヤックへ空気を入れる。「昨日確認したとき床板(?)の硬さが足りなかったので、やや強めに入れるかな」と思いながら、「キュ〜キュ〜」と情けないポンプ音を立ててると、「ボフゥ〜」と不快な音が。マイカヤックは腕の太さ程の空気室5本を横に並べたような構造になっているが、そのうち左3本の間の仕切りがはがれて太もも位の太さに合体していた。処○航海(←今ではジェンダーフリーに引っかかるそうなので、一部伏字)でいきなり故障かよ。5月というのに灼熱の太陽が接着部を弱くしたのが原因のようだ。(後日、故障状況を述べて修理の問い合わせをしたら、無料で本体交換してくれた。ビーズ株式会社さん、ご立派です。)でも、かっこわるいだけで、性能上は問題なさそうだ。準備OK。「昨年のツアー参加時と違って、今回一人だから"沈"すると大変かもしれないぞ」と思いながらカヤックの右側から上船すると、いきなり右に転覆。うは、いきなり洗礼をうけてしまった。そういえば、左側が膨らみすぎたせいで、右側の方が浮力が小さかったんだ。気を取り直して、左寄りに体重をかけながら再度上船する。よっしゃ、今度はうまくいった。B○Kさんに教わった通り、堤防の内側を通過しようと試みるが、潮が引きすぎているのか岩にはばかれて難しそうなので、意を決して堤防から外海に出ることにする。
外海に近づくにつれざわめき始めた海面は、堤防を過ぎると一気にうねりの世界に。そういえば、高さ2mの波だと言っていたな。フェリーに乗ると大したことないけど、人の身長の波を直に上から見るとこんなに恐ろしいものだとは・・・。波に横を向けると転覆してしまいそうなのでジグザグに進むが、波の上り坂を登ったと思ったら下り坂を一気に降りる状態をおよそ5秒ごとに繰り返す。船酔いに強い体質で良かった。油断すると波に横を向いてしまうので必死に漕ぎまくる。♪君のおっ、行くうっ、道はあっ・・・あっ、ワシ大発見!人間必死な状態になると『若者たち』を思わず口ずさむんだね(ワシだけ?)。左側にモッチョム岳が見えているので、舟が回らないうちに必死に撮影する。後ろを振り返ると、原漁港の堤防が小さくなっていた。
先に見える岬の釣り人も判別できるようになった頃、トローキの滝のある入り江向きに軌道修正。入り江に差し掛かると波の穏やかになり始め、トローキ滝が小さく見えてきた。「うおー、早く間近で見てー」気持ちが逸る。滝つぼ近くは両岸にプライベートビーチみたいな空間があり、左岸側に上半身裸の青年が2人寝そべっている。舟も無いのでどうやら展望台の道からそれて滝つぼに近づこうとしたようだが、残念ながらその位置からはせり出した崖で滝が見えない。2人組みは何やらうらやましそうにこちらを眺めているようで、接岸したい気もしたが物騒な感じもするので無視して入り江の中央から両岸を観察する事にする。
見上げるような絶壁で囲まれた入り江は、滝の音以外何も無く、「轟きの滝」由来の割には意外と静かだ。舟の浮力が弱くなっているので汽水域に来ているのが良くわかる。方向修正のために時々バドルで水を掻くと5mほど離れたところで「パシャパシャ」っと水音がする。「そんなに水を飛ばすように下手な掻き方していないんだけどなぁ」と思ってよく見ると、トビウオが驚いて飛び跳ねているのだった。へえ、トビウオは沖の魚のイメージがあったのだけど、こんな汽水域にも居るんだ。例の2人組の片割れは「おー、今の見たやー!」と大喜びしている。さあ、本日のメーンイベント、滝に最接近だ。ぐんぐん漕ぎ出すと、2人組は崖に隠れて見えなくなった。原漁港からここまで正味20分〜30分というところか、以外と近いものだな。
道路や展望台から見るとあまり迫力の無い滝だけど、腐っても高さ6m、間近でみると圧倒される。鯛之川の水がここに全て集結しているのだから、うっかりすると押し戻されてしまう。カヤックツアーでは滝に突撃する企画もあるようで試してみたいが、連れもいなく危険だし、水量で圧倒されて諦める。しばし滝の水と戯れた事だし、先ほどのプライベートビーチに戻ってみる。左岸は先ほどの2人組がまだ居るし、右岸は木陰になっているので、そっちに上陸してみる。おお、これは岩と砂が程よい配分で、いい海岸じゃないですか。昼食のパンを引っ張り出していると、2人組は身支度をはじめ、やがて滝と視界を遮っている崖へ登り、茂みに消えていった。日がサンサンと当たる入り江の木陰でプライベートビーチを独り占めしてランチ、こんな贅沢が出来るとは思ってもいなかったじぇ。
一通りマターリした後、再びカヤックに乗り込んで帰路へ。入り江からでると、またうねりと戦いながら『若者たち』を口ずさみ、20分後に原漁港に到着。漁港ではカヤックのツアーが出航の準備をしているところで、ガイドらしき人が「つぼやんですね」と声を掛けてきた。おお、屋久島リアルウェーブの掲示板でお馴染みのKさんではないですか。早速、名犬雁号をお借りしてカヤックと記念撮影。ツアーが各々のカヤックに上船したあと、Kさんのカヤックに雁号も乗り込んでトローキ滝に出航していった。おお、波乗り犬。後片付けを終えると15:30、「安房川も行けるかな」と心が揺らぐが、微妙なので明日の楽しみにする。
尾之間の有名なパン屋で明日の昼食を購入して、建設中のJRホテルを偵察(土台だけだった)、宮之浦で民族歴史資料館に寄り、永田の宿へ向かう。永田のいなか浜ではちょうど夕日も沈んでいるところで、スペシャルに綺麗だった(やくしまコーナー「その他山麓の名所」の夕日の写真がその時とったヤツ)。
宿に着いて本日の成果を確認すると、レンズについた水が邪魔をして部分的にぼかしまくったような写真が出来上がっていた。うおおお、何てこったい。昔読んだ科学クイズで『映写機のレンズに蝿が止まっても、スクリーンにはその影が映らない』というのを読んで水滴を全然気にしていなかったのだが、確かに条件が全然違うもんなぁ。ちょっと凹みながらも、今回の屋久島上陸のメインイベントである、明日の『目指せ!トンゴ滝作戦』へ向けての良い教訓になった事に感謝する。


まだつづく