安房岳(あんぼうだけ)


↑栗生岳より眺めた安房岳(中央):左が翁岳、右が投石岳。

標高1847m。投石岳から5分程。
九州での標高第5位。屋久島八重岳に含まれる。

元々無名峰だったが、昭和9年に加藤数功氏の
筑紫岳(投石岳)命名の際に、安房川水源があるところから名付けられた。

屋久島第二の街と同じ名前を貰い、上記の実力を持ちながら、
島の人からも「どこ、それ?」と言われる不遇の山。
ここまで来るのに一日がかりで、ちょっと足を延ばせば屋久島三岳(宮之浦岳・永田岳・栗生岳)に行けるのと、
隣に翁岳というもっと魅力的で奇妙な山があるためか、ピークの一つ程度に認識されていなかったようで
歴史的にもスルーされ続けられていたみたい。
山頂には祠が置かれていそうなロケーションがいっぱいあったけど、祠自体どこにも見つける事はできなかった。


山容


↑北西側から眺めた安房岳:上の栗生岳からの写真アップ。
こっちの斜面はすり鉢地形なのか杉がにょきのにょき伸びている。
山頂に登る最短コースが取れるが急傾斜と背丈以上のヤブ漕ぎが辛そうだ。
右端に奇岩を乗せたニセ山頂(勝手に呼んだ)が、東京浅草アサヒビールの金色オブジェみたい。



↑南側から眺めた安房岳:投石岳との鞍部の遭難碑辺りから見たところ。
こっちからだとニセ山頂(勝手に呼んだ)しか見えないが、
ピークの左にちょっとだけ山頂の巨岩が覗いている。



山頂


↑安房岳山頂:山頂は背丈より高いヤクザサとシャクナゲの壁に囲まれた鳥の巣状になっている。
その鳥の巣状の中央部にはビルレベルの超巨大な岩が3基ある。
写真中央に見える裂け目のある大岩が山頂で、
右の岩はもっと大きいが親不知のように埋もれて一段低い位置にある
(あと人の背丈くらいのがいくつかゴロゴロ)。



↑安房岳山頂:。
上の写真の右の2つを間近から眺める。
中央大岩は大きく2つに裂けており、その間にチョックストーンが挟まっている。
ちなみに手前のヤクザサは人の背丈よりはるかに高い。



↑安房岳山頂の中央大岩:上の写真の右側(南側)に回り込んでみたところ。
山頂である大岩は高さ30mぐらいありそう。
ほどほどクライミングテクニックがあれば山頂直下の段差までは
登れそうだけど、危なっかしくて一人では無理だったよ。


↑山頂の広場:山頂大岩三兄弟のうち一番北側と中央の岩の間は
いい感じの広場になっている。
広場真ん中にはいい具合にテーブルにもイスにも使える
直方体の岩があって食事休憩に最適、上を見上げなければ・・・



↑山頂の広場:上の写真の場所を中央大岩側から眺めたところ。
テーブル岩(左下)の上には、大岩上半分がはずり落ちスタンバイ中の
ような状態になっており、気にするとちょっと怖い。
間近で見ると上半分の岩には大きな亀裂が幾つもあり、テーブル岩も元々この岩の一部だったのが伺える。
テーブル岩ご利用は自己責任で・・・



↑山頂大岩の回廊:中央大岩には
目の高さ位のところに自然に出来たトンネルがある。



↑山頂大岩の回廊:上の写真のトンネルを覗いてた。
ハイハイだと余裕で通り抜けられるくらいの広さで、古墳の中みたい。
祠を置くにおあつらえ向きだけど、探してみてもどこにもなかった。



↑山頂大岩の岩屋:山頂大岩の基部には天井まで4mはありそうな岩屋があって
反対側まで通り抜けができる。ここも祠がありそうな雰囲気だがどこにもなかった。。



↑チョックストーン:中央大岩の裂け目に引っかかった
崩落岩を見上げたところ。



↑地べた近くのチョックストーン:中央大岩の南側は
崩壊した岩のたまり場になっているようで、大きな岩が邪魔で探索が難しい。
そんなところに現れたお手軽チョックストーン。
障害物競争のハシゴくぐりのように通り抜ける事もできなくはないが、
引っかかって一人では進めないので、ここは右の岩を乗り越えて進んでみた。



山頂からの景色


↑安房岳山頂から北側の眺め:左が宮之浦岳、右が翁岳。
翁岳の左すそに縦走登山道が見える。
ここからだと、時おり降りてくる登山者の顔まで見えそうな近さだが、急坂と
ボウボウに伸びたヤクザサと杉の木が立ちはだかっている。
安房岳への登山道についての記録は見たことは無いが、
翁岳山頂から道跡のようなスジがこっちに向かっているのが気になる。


↑安房岳山頂から南側の眺め:中央がニセ山頂で、すぐ左奥に見えているのが投石岳。
右奥は黒味岳。
なお、投石岳の両肩に霞んで見えるのは、左が鈴岳、右がジンネム高盤岳。


↑安房岳山頂から北東側の眺め:中央奥に尖がっているのが愛子岳。
その両脇のピークは、左が楠川前岳、右が船行前岳。
中央両脇に大きく広がっている山すそは、左がヨウジガ高岳、右が石塚山。
中央手前にまるで隣の山のように見える盛り上がりは、ただの安房岳と翁岳の尾根筋。


↑安房山頂から安房川河原:上の写真で愛子岳山頂からの直線上で、
安房岳尾根筋の右肩に見える無毛地帯のアップ。
初めは花之江河かと思ったが、それは黒味岳の向こうに隠れて見えない筈だし、と
調べて見たらどうやら荒川登山道の大株歩道入口近くにある
安房川カーブの川幅が極端に広くなっているポイントらしい。
登山道である荒川トロッコ道は上の茂みの奥にあるはずだが、
写真の河原の上辺に軌道のような物体が見えるのが気になる。
トロッコの分岐線跡だろうか。岩棚などの自然のいたずらだろうか。


ニセ山頂


↑安房岳のニセ山頂:本山頂との鞍部から撮影。
このピーク自体に名前はついていないと思うので、ニセ山頂と勝手に呼ば差せて頂いた。
投石岳側から登ると、山頂と思って立ったところの隣に本当の山頂が鎮座している挫折感と同時に、
モニュメントのような奇岩が待ち構えているのに驚きを隠せない。



↑安房岳ニセ山頂の奇岩:北側から眺める。
山頂がちょっとした広場になっていて、その中央に土台付きのモニュメントのような奇岩が
絶妙のバランスで残っているのにはまさに奇跡。



↑安房岳ニセ山頂の奇岩:西側から眺める。
投石岳から登ってくると、このアングルで出迎えてくれる。
ためしに揺すってみたけど、台風銀座で生き残っているだけあってびくともしなかった。
手前のは大きさ比較用の15リットルザック。



↑安房岳ニセ山頂の奇岩:アサリ貝の導管のような突起が残った花崗岩。
この角度から隠れているけど、突起は3本あった。


ニセ山頂からの眺め


↑安房岳ニセ山頂から北側の眺め:ニセ山頂に騙された登山者に
爽やかな高原のような姿で立ちはだかる本物の山頂。


↑安房岳ニセ山頂から南側の眺め:左奥が投石岳で、中央奥が黒味岳。
手前から左奥に続く縦走路を歩く登山者がこちらに気付いて
「あんなところに人がいる」と話している様子が見えるのが何だか愉快。


登山口・・・はありません

↑安房岳南側からのアタック箇所:過去に道が作られたという記録も無いようで、
登頂するには少しでも歩きやすそうなポイントを決めてヤブを漕ぐべし漕ぐべし。
胸位の深さがあるヤクザサが下側に向かって生えているので、押し返されるのに逆らって登らなければならない。
しょっちゅう現れるシャクナゲと小さなスギの木が中々の好敵手
(GWに登った時はスギ花粉のゼロ距離噴射も受けて、しばらくは大変だった)。
あと、西側からの最短ルート開発も手だが、傾斜がもっと急なのとヤブがもっと深いので大変そうだ。



宮之浦歩道の通過点


↑安房岳を通る宮之浦歩道:投石岳側と翁岳側の両サイドはこんな感じ。
投石岳側は小石と土が露出した小道があるが、
だいたいヤクザサ帯の上に敷かれた木道が続いている。
ササも特に邪魔にならず、心地よく解放感のある山道だ。


↑安房岳の湿地帯:安房岳の核心部は小楊子川右俣の源流になっていて、
木道の周りに清水が流れるやら、コケやら食虫植物が生えているやら、
庭園っぽくって楽しい。
(因みに、山名の元になった安房川源流は山の反対側)。
それにしてもなんだろう、このポイントの木道のカオスっぷりは?


↑安房岳の湿地帯:宮之浦岳縦走で唯一現れる綺麗な小池。
アメリカンサイズの組立プール位の大きさで、
いつも澄んだ青い水を湛えてちょっと足を浸けてみたい衝動に駆られる。


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