投石湿原(なげし しつげん)

↑投石湿原:登山道の脇にあるちょっとした広場。
水場のような水たまりそばに「投石湿原」の標識があるが、気に掛けない登山者も多いようだ。

 
投石岳と黒味岳の鞍部にある湿原。標高1620m。
辺り一帯が常に水に浸されており、
登山道がある東側は安房川南沢の源流、西側は小楊子川右俣の源流となっている。
かつて黒滝が現役の頃は、縦走ルートで唯一、滝(の脇)を登るレアなポイントとして
ランドマーク的な扱いだったようだが、昔のガイド本(※1)から察するに
1980年代前半に「投石湿原」の標識が建てられて名前が知られたのと入れ替わりで、その黒滝が枯れてしまったようだ。
(投石岳山頂付近をトラバースする登山道沿いにもっと見晴の良い広い湿原があるので、
黒滝がほぼ枯れた今となってはそちらの方が投石湿原の名に相応しい気がする。
まあ、山名の元にもなった、投石平そばの湿原という意味で譲れないか。)

すぐ近くに花之江河の大湿原はあるし、すぐ脇には黒味岳がそびえ、ちょっと歩けば休憩に最適な投石平の大広間もあるので、
今はうっそうとした森歩きからちょっと解放されたロープ場ぐらいの扱いしかされていないような気がする
(多くのガイド本でも1行以内で紹介される程度で資料が少ない・・・)。
でも、飲料に適した水も絶えず流れており、ちょっとした広場もあるので、小人数なら調理休憩をするのにもってこい。


※1)・・・1967年遠藤史朗『海上アルプス 屋久島連峰』、1970年赤星昌『屋久島 美しい豊かな自然』、
1980年松田好行『屋久島の自然』、この3冊には黒滝が登場するが投石湿原の名前は出ない。
1986年足利武三『霧島連峰と屋久島の山』、1991年(1997年改定)吉川満『鹿児島の山歩き』、
この2冊には投石湿原が(前者には標識の写真も)登場するが、黒滝の存在は無い。
なお、1993年太田五雄『屋久島の山岳 近代スポーツ登山65年の歴史と現在』にも黒滝が登場して投石湿原の名前は出てこず
1997年吉川満『フルカラー特選ガイド 屋久島を歩く』に投石湿原出て黒滝ないのを見て、
当初は「93年の世界遺産登録がターニングポイントか?」と思ったが、
太田氏の方は製本するまで十年以上要した箇所も見受けられる。
以上を踏まえ、1980年代前半入れ替わり説を提唱。


投石湿原の遠景


↑黒味岳から眺めた投石湿原:
中央に大きく露出している岩が投石平で、
その下に横一文字に広がる一帯が投石湿原。
看板設置の頃はたぶん草がパラパラ生えている程度だったと思うが、
灌木が生い茂った今は湿原感がほとんど無い。
右下辺りに見える細長いハゲが登山道で使っている部分。


投石湿原


↑投石湿原:水量の少ないナメ沢がそのまま登山道になっている。
画面左奥に当ページトップの休憩広場(?)がある。

 

↑投石湿原:上の写真の鹿の立ち位置から振り返ったところ。
こんな所で道迷いは無いと思うが、大岩の上に年々じわじわ高くなっているケルンが何故かある。
右奥に見えるのはベンチでは無くて、最近に設置されたロープ場へ続く木道。


黒滝


↑黒滝:落差7m。1970年出版「屋久島 美しい豊かな自然」(赤星昌著、茗渓堂刊)によると、
写真右側の黒い斜面が常に水を湛えるナメ滝だったようだが、
今では写真中央の浸食溝に川の流れが変わっており、大雨の時だけ出現する幻の滝となっている。
(幻といっても、屋久島で雨が降るとあちらこちらに滝が出現して、それどころでは無いが。)


↑黒滝のロープ場: 安房南沢支流から取り付くロープ付急坂。
画面右端の苔がまばらに付いている所が黒滝。
かつてはナメ滝を見ながらの上り下りができた。いいなー。


↑黒滝の滝頭:写真左が黒滝の滝頭。
上記「屋久島 美しい豊かな自然」の写真では滝の隣に溝など無かったが、
辺りは砂を押し固めただけのような脆い地質で、
1990年頃にあっという間に浸食が進んで、本滝へ流れていた水を大方奪ってしまったようだ。


↑(新)黒滝?:上の写真の浸食溝の下は樋状の小滝となっており、
ピチョピチョ水音を立てながら安房川南沢支流に流れ込んでいる。
登山道の脇にありながらも隠れて見えないので一応幻の滝か?
取るに足らない規模の滝ながらも、回廊のような狭い小川の奥で、
苔などの緑色の照り返しを受けてひっそりと流れており、ちょっと神秘的な空間である。


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